Avichal Garg「教育系スタートアップがコケる理由」
Avichal's Blog 2011.10.7のエントリ
Why Education Startups Do Not Succeed
- AvichalはSpoolのco-founder
- 教育系のスタートアップがネット系のスタートアップ違ってつまずくポイントを列挙してて面白い
- お客の教育観を分かってない、教育市場は巨大だが見当違いなところにフォーカスしてる会社多い、等々
- 公文式(Kumon)が登場してる
以下斜め読んだ内容
このエントリのきっかけ
- PrepMe
- 2001年に立ち上げた
- オンラインの教育系スタートアップでは最古参
- Providence Equity Partners傘下のAscend Learningに買収されたのが、2011年
- 先月にVCに頼み込んで、教育系ビジネスへの出資について意見交換したり、起業家6人に援助を求めたりした
- そこで話した自分の考えをこのエントリでまとめる
- このエントリはあくまで私見のまとめ
- 思い切った一般化してる。教育政策、経済政策、テクノロジー、等々
- PrepMeやSpoolの公式見解と受け取らないように
始めに要約すると。。。
- 多くの教育系起業家のビジネスモデルは悪い
- 「品質」という切り口で教育ビジネスを考える
- だが平均的な人は教育を「コスト」として見てる
- 教育ビジネスが軌道に乗るプロセス
- インターネット企業の成長曲線からは乖離してる
- 20年かけて教育の問題を解決したい?だったらやりなよ、という感覚
- アメリカの貧困層への教育提供、アジアで教育系企業作る
- ここにだったらチャンスある
- アメリカの中流層をターゲットにしても見込みゼロ
- 長期的に見れば、教育への通念は変化しチャンスも広がる、かも
- ここでいう「長期」は5年単位の話
高い教育を受けた人たちと平均的な人たちでは「教育」観が違う
- VCや起業家はたいていいい教育受けてる
- いい教育受けてる人たち
- VCや起業家がたいてい該当する
- 教育=投資と考える
- 元を取るのに20年かかる投資、と納得してる
- リターンは高いとわかれば投資を厭わない人たち
- 教育=投資と考える人は、価格に敏感でより高い品質を目指す
- ここでの「品質」は、リターンの大きさを言ってる
- サービス購入の決め手はコストではなく、品質
- 平均的な人たち
- 教育はあくまで「出費」
- 義務だから教育を受けてる
- 高い教育を受けてないことがマイナスになるような暮らしをしていない
- 2005年頃のOhioの小さい町を例に。。。
- ちなみに自分はOhio出身
- 大学出てないOhioの典型例
- 年収2.5万ドルの工場の職、妻も同じく2.5万ドルの工場の仕事、トータルで年収5万ドル
- 住宅は9万ドル、食べるのに困らない、車はローンだが月々300ドル
- とても困ってるわけでない
- 彼らの子供も似たような暮らしになる
- まとめると、住宅を変えて、食べるのに困らず、車も買えるし、週末の娯楽にも金を使える生活
- 高い教育を受けていないことが、典型的アメリカ人の暮らしにもたらす影響
- 安定した雇用が得られない
- 老後が不安定
- 病気になれば破産へ一気に落下する
- 色々悪影響あるけど、高等教育の欠如が、直接的に何かをもたらさない
- 自分たちの子供にも直接的な悪影響がない
- こういう事情から教育を出費としてみるようになる
- 厳しい現実
- 70歳で病気になれば生活崩壊する
- 年金(401k)払ってこなかったら死ぬまで働かないとダメ
- 自分の子供の能力は今後30年のグローバル市場で太刀打ちできない
- SAT受験前にKaplanのようなprep schoolに通う子どもは15%
- アメリカ人の50%以上は高校も出ていない
- 教育への見方が根本的なレベルで違う(投資/出費)ことがとても重要
- スケールする教育系企業の条件
- 見込みゼロ
- 高等教育の提供に力点ある企業
- 成長の余地あり
- お客が支払うコストを減らしていくことに力点置いてる企業
- 見込みゼロ
- 具体的に教育市場から何社かピックアップ
- Chegg
- 教育系スタートアップ
- 評価額1億ドルで、急成長
- 教科書から得られる効果をより安く売ることに力点
- 2011年頃から教育版Netflixがブームに
- DVDレンタルをNetflixが駆逐していったのを連想させてる
- 夢のテキストブック
- デジタルでパーソナライズされ、オンラインで学習できて、タブレットでできる、インタラクティブ、ソーシャルなテキストブック
- まだ実用化されてない
- University of Phoenix
- 学位取得の敷居を下げようとしてる
- 利便性の提供
- 政府系ローンの支援を取り付けてる
- お客がサービス受けるかどうか(金を払う価値があるかどうか)を決めてる
- お金は最終的には政府が責任を負う構図
- BtoCではない。マーケティングに力入れてる
- 地方大学で取れる学位と同等の学位をより簡単に手に入れることができるようにしてる
- Harvardといった有名大と競争しない
- Phoenix大学は地方大学を競合とみてる
- 地方大学の方が学費は上で、夜間コースしかないところもある
- Phoenix大学はポッと出ではない。1976年開学し、1994年にIPO済
- Kaplan
- 元々は予備校ビジネス。ビジネスとしてあまり成功してなかった
- コンシューマビジネスで、教育の価値に力点置いてた
- Phoenix大学を手本に方向転換
- Kaplan大学でPhoenix大学のビジネスを真似して、成功
- 利便性を訴求するビジネスに転換
- 元々は予備校ビジネス。ビジネスとしてあまり成功してなかった
- K12
- 学区相手にビジネス
- 他の子どもよりコストの高い子どもへの費用をカットする仕組みをK12は提供しようとしてる
- 特殊な要件のある生徒、才能ある生徒、地方の生徒、等々
- 中東やアジアでビジネス展開してる
- Chegg
- 通常のインターネット企業のスタイルで教育系ビジネスやってるところもある
- Tutorvista
- オンラインの家庭教師サービスとしてローンチ
- 先生はインド在住の人を使って、英語圏の人にサービス提供
- 月額99ドルの利用料
- 検索エンジン対策に大金
- 数千万ドル単位の収益。IPOには足りない
- ビジネス転換し、インドに教育センター設立
- 2億1300万ドルでPearsonが買収。この規模の買収はインドでは初
- Tutor.com
- 10年前にローンチ
- オンライン家庭教師ビジネス
- 5ラウンド連続で出資受けたが軌道に乗らず
- 路線変更し、ニッチな市場に活路見出してる
- 図書館、学校など政府系の顧客をターゲットに
- GlobalScholar
- Drugstore.comのCEOが始めて、コンシューマ向けビジネスとしてローンチ
- 成功しないと気付いてデジタル版通信簿をよそから買い取ってきた
- のちに学校関係に流通販路持つScantronが買収
- 教育の品質にフォーカスして、瞬く間に100万ドル以下で収益頭打ちになった企業の例はたくさんある
- 自分たちが暮らす街の教育センターが10くらいあるとしたら、それぞれが年100万ドルくらいの収益
- (ローンチ直後の収益を支える)アーリーアダプター層の見方と大多数の人たちの見方が根本的に違う
- Tutorvista
脱線:アジア系、貧困層であれば話が変わってくる部分がある
- アジア各国に住んでて教育をちゃんと受けてないなら、生活は困窮してるはず
- 困窮の原因は部分的には文化的
- 社会資本がなければ教育を受ける余地がない
- 困窮の主原因は経済的なもの
- 教育をうけてなければ、ありつける仕事は単純労働系になり、子供のために十分なお金を回すことができない
- この困窮の意味合いは、中国で暮らす人とKansasで暮らす人を比べると明確になる
- 中国で教育を受けてないことがもたらすこと
- 職が得られない
- 貧困にあえぎながら死ぬ、子どもに十分食べさせることできない、親の面倒見れない
- 中国では、若者が家族の年配層を養うべしという家族モデル
- 中国で教育を受けることが豊かな生活への手がかりになってる
- コールセンター、銀行、政府系機関、軍隊への就職への門戸
- 貧困にあえいだ親世代は子どもには良い暮らしを得るチャンスを与えようとする
- Kansasで大学を出てない人は優雅な暮らしや安定老後はおそらく手に入らない
- だが、自身も子供も自分の親も餓死したり、ホームレスになるということはまずない
- 中国人に見て取った「学歴無しが貧困に直結する」という感覚は、移民であるアジア系アメリカ人の間にも広まってる
- もちろん、アジア系アメリカ人共通ではないが、この感覚が広く共有されてるのは見て取れる
- 中国で教育を受けてないことがもたらすこと
- アジアで一般消費者向けに教育系ビジネスを立ち上げるとき、ビジネスを軌道に乗せてスケールさせることができる
- MegaStudyとKumonはその好例
- アメリカではうまくいかないのは、アメリカにはアジア系アメリカ人の数がそれほど大きくないから
- 貧困も教育に対する考え方を変える
- 面白いデータ
- アメリカで新しい事を始めるのに積極的なのは貧困層というデータ
- アメリカ貧困層の動機づけの構造はインドの田舎の人たちとよく似てる
- アメリカ貧困層もインドの田舎の人たちも「困窮」が通常の状態
- 何か劇的なことを始めないと困窮がそのまま継続する
- 親や教師はこのことをよく理解してる
- 何か劇的なことを始めないと困窮がそのまま継続する
- 貧困層のコミュニティでは奨励されるのは、新しく実験的要素の強いことを試すこと
- オンラインスクールやチャータースクール、学期の延長、夏休み撤廃、co-op(産学連携の教育)
- 「うまくいかないかも」と感じても手を付けてしまう
- 現状の困窮を劇的に変えるものを求めてるから。だから積極的に手を出す
- 出口のない困窮からの脱出には、高品質なものをやらないとダメ、と思ってるから
- 貧困層向けのビジネスのポイント
- 貧困層の一人一人は十分なお金を持たない
- 貧困層コミュニティにある学校などをターゲットにする
- エンタープライズ型のビジネスに似てる部分あり
- Kumon
- 評価額10億ドル以上
- アジアでローンチし、フランチャイズモデルで、教育を受けた家族をターゲットにしてる
- 学生が出かける場所であり、学生を監督する場所を提供してる(ある意味ベビーシッター的)
- 抱える学生数420万人
- アメリカでは少ない。20万人くらい
- Khan Academyの利用者層
- Quantcasが出してるデータ
- 高等教育受けてて、補助教材を探してる人
- 貧困層(ヒスパニック系、アフリカ系とほぼ一致する)
- アジア系
- 教育市場は数十億ドル(数十兆ドル)規模
- 長期的スパンで考え、今後25年で有意義なものを作ろうとしてる人には、チャンスはたくさん
- 落とし穴色々
- よいプロダクトによい結果が自動的についてくると、信じてはダメ
- プロダクトをより安く提供していくことには成功の可能性が高い
- この辺は高度な教育を受けた人が嫌がる部分
- 先進国・欧米国でビジネスをスタートさせてはダメ
- 飽和気味。一般消費者をターゲットにしてるなら、アジアは見込みある
- VCから出資受けてはダメ
- ビジネスの成長曲線がスタートアップ一般と違う
- ビジネス初期にVCが思い描くものと乖離してる
- まずは、従来と違うことを教育分野で見てみたいと考えるエンジェル投資家から出資してもらうのがいい
- 次に、1000万ドル収益が見込める目途が立ったらになったらprivaty equityを受け入れる
- ベストは、praivaty equityに頼らず、キャッシュフローだけでビジネス回すこと
- 成功する教育系ビジネスの多くは、private equity抜きでやってる
- 中流層をターゲットにしてはダメ
- 困窮して新しい打開策を渇望してる貧困層をターゲットすべし
- 中国・インドの家庭をターゲットにすべし
- 彼らの教育費を半減させることができるはずだから
- 高い質の教育に対して金の糸目を付けない人たちをターゲットにすべし
- 急成長を絶対に期待しない
- 20年かかる
- ネット起業を同列にできない
- 収益が1000万ドルに達するには相当の時間が
- そのレベルに到達したら、ブランディングしていくべし
- 教育産業は小さいので良いサービスはすぐに広まる
- 最後におすすめのエントリ
- このエントリで書いたことでなかなか信じてもらえ無さそうな部分を補強してくれる統計データとかもある
- Preparation for College Admission Exams,2009 NACAC Discussion Paper
- (補足)
- リンク切れ。web.archive.orgにキャッシュ
- Preparation for College Admission Exams
- (補足)
- Educational Attainment in the United States: 2009 - Detailed Tables
- Private Household Spending on Education & Training
- More Money spent on Education and General Problems with Education in Korea
- (補足)
- リンク切れ。web.archive.orgにキャッシュ
- Joe S e o u l m a n: More Money spent on Education and General Problems with Education in Korea
- (補足)