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以下斜め読んだ内容

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海部美知『パラダイス鎖国』を読んだ。

books

『おもてなしの経営学』(asin:4756151345)と並行してだが、『パラダイス鎖国』(asin:4756151337)を読み終わった。話題になってから随分たってしまった(ちなみに家の近所の本屋さんでは3件ともいまも店に置いていない)。『おもてなしの経営学』は割とすいすい読めたが、この本は途中で飽きて何度も中断しながらの読書となった。話題になってたので読んでみたが自分が日本論や日本人論に関心があまりなく他人事のように感じてるからだろう。
一番印象に残ったのは「美しいレジュメを書く」という箇所。

職業の経験を積んでいく上で、アメリカの「レジュメ(履歴書)」を美しくする」という考え方は参考になる。単に有名な大学や企業の名前がずらりと並んでいるということではなく、自分のやってきたことの一貫性と説得力が大切だ。「この仕事をやっているときに身につけた経験を、次にはこうやって別の分野に活かした」といえるようにキャリアを積んでいくのである。遠い先のことまで考えた一貫性でなく、これまでの積み上げを、次のステップでどう使うかという、そこまでの話でよい。そのためには、現状の環境が嫌だからどこかに青い鳥を求める、いまの自分ではない誰か別の人間になる、というのではなく、これまでの仕事で自分が何を得たか、このあと役に立つとアピールできるのは何か、自分の在庫を転換し、利用できるものは大いに使う、というステップを踏むことが重要だ。現在自分のいるところがたとえ不満な環境であっても、そこで次に役立つ何かを得られるように考える。少なくとも次のステップが、いまよりもいいものになれば、暮らしやすくなっていいくはずだ。p.172

常に「転職」を考えていて、辞める理由とか、今の職場への不満とか、転職の理由とかをどう無難にまとめればいいのかが気になっている自分とってとてもためになった。
一番不満を感じたのは格差について言及している箇所。日本論・日本人論に関心の薄い自分だが日本論・日本人論に対しては自分はリクエストしたいことがいくつかある。『パラダイス鎖国』に次のように書かれているのを目にした。

一方、「格差社会」でお金がなくて苦しくて、どこがパラダイスだ、と異議を唱える人もいる。それもまた、生活実感である。「就職氷河期」で苦しんだ人たちや、それを間近で見ている若い人たちには、こうした閉塞感があるように思う。「日本が澄みやすくて不便を感じない」という生活感覚と、「お金がなくて苦しい」という生活実感の間に、奇妙な乖離がある。これが「パラダイス鎖国」に直面した日本人の姿だ。p.21

日本人論・日本論について書かれたものについては、いわゆる格差とかワーキングプアも視野に入れたものを読みたいと思っている自分としては、上記の箇所を読んだとき「パラダイス鎖国」という海部さんの持論は、格差/ワーキングプアも視野に入れた議論なんだと期待が一気に高まった。けれど、格差やワーキングプアについて書かれているのここのみで、仄めかしだけで終わってしまっている。この本で書かれた内容を考慮すると「「日本が澄みやすくて不便を感じない」という生活感覚と、「お金がなくて苦しい」という生活実感の間に、奇妙な乖離がある」という主張は断定されるだけで終わっている。論じる用意があって仄めかされているのではない。自分はこのような書き方は不誠実だと思うし、今後の課題リストに移動させるべきだったと思う。
海部さんの日本社会の分析で印象に残ったのは次の箇所。

金融政策や各種の権利保護など、立場の違いにより賛否両論あるような点はなかなか先に進まないが、「鉄道が便利になる」「上下水道」が整備される」「初等教育を普及させる」などといった、誰も批判しにくく、暗黙の合意が形成されやすいものについては、どんどん進む。p.75

合意の成立のしやすさが日本社会で発展と普及にとって重要なファクターであったという視点はかなる納得した。こういう視点での分析は前例がありそう(『カオスの時代の合意学』 なる本があったし。創文社現代自由学芸叢書シリーズで。asin:442373057X
他印象に残った箇所。

加入者数で中国がアメリカを抜いたのは、2001年であったが、わずか5年後にはもう倍近くの差が開いた。インドは2006年に日本を抜いたばかりだが、これからはますます差が開いてく。p.39

2つの指標を見比べてみると、共通して政府部門が最大の問題と見られていること、インフラの整備はかなりよくなっていることが日本の特徴として浮かび上がってくる。p.64

シリコンバレーとハリウッドは、「販売」サイドでの著作権ロビーとネット配信の軋轢があるため、敵味方ととらえられることが多いが、実は「制作」側において相互依存関係を深めつつ、新しいエコシステムを作り出している。pp.124-5

「褒める育児」ということがよくいわれるが、それは「ポジティブ・フィードバック」を育てるための、新しいインセンティブ設計のノウハウである。・・(略)・・今の時代、ポジティブなインセンティブ設計以外の選択肢は考えにくい。設計自体を批判するよりも、副作用をなるべく抑えるように仕組みを改善し、日本的な規律教育との新しいバランス点を探していく方が現実的だ。p.157

パラダイス鎖国 忘れられた大国・日本 (アスキー新書 54)
海部 美知
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4 海部さん。僕は勝手にどんどん「開国」しちゃってます。
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