以下斜め読んだ内容

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佐々木俊尚『ウェブ国産力』を読む

ウェブに関する読み物で足を使って(=取材して)書かれたものは少ないのでこの人のものは面白いし色々『Google』(asin:4166605011)以来色々読んでるが『ウェブ国産力』(asin:4756150950)も勉強になった。
感想。ウェブやネットのブレイクスルーの鍵を握ってるのは「個人情報」「プライバシー」なんだなということを再確認できた。どんなに画期的なサービスやビジネスも必ず「個人情報」「プライバシー」の問題が懸案事項として浮上してくることを各章で取り上げられているサービス、ビジネス、技術、インタビューを読むたびに個人情報とプライバシーについてどう対処するかがポイントの1つになると感じた。そして、いずれの場合も面白みのあるポイントとして語られていないこと、目の上のタンコブ的な存在であることも感じた。もっとも著者の意図は別の所にあるのだが、そんなことを読んでて思った。

森田 プライバシーの問題をクリアする方向性は二つあると思っていて、ひとつは、ユーザーが利便性を得るためには自分の思考慈雨法をサービス側に提供しても仕方ない、当然のコストだと割り切れるようになるということ。そうすれば先のステップに進むと思う。もうひとつの方向性は、ユーザーが検索エンジンの側に個人情報を送らなくても、検索エンジンにとってヒントになる情報だけを送ればいい。そのためのプログラムをユーザー側においておく。そしてそういう仕組みを受け入れて貰うためにエンジンの作りをオープンソースにして、『このソフト、このサービスなら大丈夫だ』という信頼感が培われるようにしていくという考え方だね。p.41

だからこの検索連鎖側マッチングは、検索エンジンを進化させる方向性としては、きわめて重要なアプローチである。
しかしこのサービスを具現化しようとすると、別の重大な問題が頭をもたげてくる。
利用者のプライバシーをどう保護するのかという問題だ。
個人の行動履歴や属性なんどのデータをサーバの側が収集すればするほど、プライバシーに対する消費者の懸念は高まってしまう。おそらくこうした課題は、マイ・ライフ・アシストサービスだけでなく、こうしたライフログ的なサービスを希求していく場合に必ず大きな問題となっていくはずだ。
これをどう解消するのか。pp.81-82

とはいえ、そのような精緻な自分の行動や属性を、消費者が企業にそう簡単に渡してくれるわけではない。特に個人情報保護法施行や相次ぐ顧客情報流通事件をきっかけにして、プライバシーに対する権利意識はかつてないほどに高まっている。このような状況の中で、どのようにして消費者の属性や行動パターンを収集すればいいのか――そういう大きな問題が、マーケティングの世界には立ちはだかっている。p.123

・・ここで書かれている考え方は、ブログによって収集される行動パターンや属性データと、そのデータの持ち主である個人を切り離し、
「どこの誰かは特定されていないけれど、どこかに存在する人の属性と行動パターン」としてデータを活用していこうという考え方である。・・・(略)・・・つまりは「匿名化されたプライバシー」のような世界を作り出し、この中でデータを自由自在に動かしていこうというわけだ。
とはいえ、そのスキームによって匿名化が本当に完全に可能なのか。
実の所そのあたりはまだグレーだ。収集される行動や属性が細かくなればなるほど、その人が誰かを特定しやすくなってしまうという危険性もある。pp125-6

たとえば高齢者が、田舎でひとり暮らしをしているような場合。からだに付けたセンサーが体温や脈拍数、歩行数などのデータを自動的に収集し、それをケータイ経由で同センサーの管理しているネットワークに送信する。サーバーに蓄積されている過去の身体データと比較し、体温が上がっているのか、あるいは脈拍はどうなのかといったこと調べ、解析する。

「体温三六・二度 脈拍数七五 異常ありません。今日は八千歩も歩かれたようで、健康的な一日だったようです」

たとえばこのような解析結果(実際にはもっと複雑な内容になるだろうが)を、東京に住んでいる息子やかかりつけの医師に送信する。医師は常に患者の状態を把握することができるし、息子は「田舎のオヤジは元気なんだなあ」と安心することができる。」pp.180-181

八尋 検索・解析ビジネスでは、どの程度のサービスを、どこまで提供できるのかという問題に、企業は直面しています。たとえばファミリーレストランで提供した食事のカロリーの集計は、クレジットカードごとに簡単に行うことができます。でも今の法律では、クレジットカードを作るときに、「ファミレスでカロリーを集計しますよ」と事前に伝えておかなければならない。またNTTデータは今回、情報大航海に採択されたモデルサービスで、ひとりひとりの運転者に合わせたカーナビを作ろうと考えている。
佐々木 個別最適化ですね。はい。夫が乗るときと妻が乗るときでは、状況が違う。妻は子供連れのことが多いから、カーナビにおむつを代えられるトイレが表示されたりとか、そういう仕組みを作ろうと言うことです。しかしそうなってくると、プライバシーの情報をどこまで集めるのかという問題が浮上してくる。p.251

前出の日立コンサルティングの石田は、こう話す。
情報大航海のモデルサービスの大半が、個人情報を扱っています。もし世の中の人たちが『こういうビジネスは危ないのではないか』と感じてしまったら、サービスに入ってきてもらえなくなってしまう。だったら『このサービスは安全ですよ』ということを保障してもらえる仕組みがあればよいのだけれども、いまはその部分があまりにもグレーになってしまっているので、どれが本当に安全なのかどうかという担保がない。サービス企業が自分で『安全ですよ』といくら言っても信用してもらえないし、誰かその保障をしてくれる仕組みや機関が必要になると思います。」pp.256-7

印象にのこった箇所

佐々木 でもウェブの検索エンジンって、技術としてはもう枯れちゃってるんでは?
森田 グーグルが出てきたときだって、「検索エンジンはもう枯れてる」と思われてたんですよ?でもグーグルの検索エンジンに慣れきってしまった現時点から見直してみると、当時流行していたインクトゥミとかアルタビスタの検索エンジンって、かなりイマイチなんだよね。でも当時は、それがイマイチだとは思っていなかった。グーグルを知らなかったから、「検索エンジンってこんなものなのかな」と思い込んでいたわけですよ。p.19

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